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【名無し】文理板雑談交流所【コテ】

273 名前:あやこ豚:2005/01/17 01:23
「お前の下宿によったよ」
浪人は黙っていた。
「俺さ、考えたんだけど、お前、Fランクに行く気はないか」
「なぜ」
「なぜって、まあ随分ながく浪人をしたじゃないか。もう充分だろう」
「まだ、第一志望に届いてないわ。予備校の先生だってこれからだと言ってくださるんだもの」
「誰だ、その先生ってのは」
「○○さんよ。昨日、話したじゃない」浪人は怒ったように言った。
「○○○ゼミナールで冬期講習も満員だった一流の講師よ。浪人で彼に真剣に教えて頂いているのは私一人よ」
私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらず異様な髪の形をした女や、
辞典のような参考書を持った男たちが幾十人も試験会場を右往左往していた。これらは屑だ。
どれもこれも受験の中で自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。
浪人も今、この会場の中でその一人になろうとしている。
「でも、こんな連中みたいになったらお終いじゃないか」
私は大学の合格通知をそっとチラつかせた。だが、浪人は負けずに、
「たとえ、そうなったって………生きることって結果ではないじゃないの、
 償われなくったって自分がいいならそれで結構じゃないの」
「だがな、この連中を見ろよ。惨めだと思わないかい」
この会場に来てまで浪人と争いたくはない。ただ、これら男女が、
しゃべったり、懸命になったり誠実に生きても、受験の残酷な世界では
第一志望に合格できるとは限らないと浪人に言ってやりたかったのである。
だが、言葉はうまく口からは出ずにそれは別の結果を浪人に及ぼしたらしい。
「わかったわ」浪人はまばたきもせず黒い大きな目で私を見つめて、
「だからローちゃんは推薦入学にしたんでしょう。
 ローちゃんはなにか報われなければ嫌だったんでしょう」
「よそうよ。喧嘩するのは」
私は勘定書を手にとった。浪人の言っていることは半分は正しい。
数ヶ月前、私の片半分は安易さを捨てろ、もっともっと上の大学を目指すべきだと囁いていた。
それに耳を塞いだ私はあの宮廷のバラ色の生活を喪い、そのかわりにこの合格通知をえた
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